江戸時代中期から醤油が広まるまで、日本酒に梅干しなどを入れて煮詰めた「煎り酒」は、庶民の間で調味料として親しまれていた。シンプルだが味わい深く、素材の味わいを邪魔しないのも魅力だ。
“酒”と名前につくものの、煮詰めているためアルコール分は飛んでいる。食塩含有が少なく昆布や鰹節などの旨みを利かせているので、減塩対策にも打ってつけ。ヘルシーで調理法を選ばないので、ぜひ家に煎り酒を常備してみては。ほのかな酸味とじんわり広がるうまみで、夏の献立にも重宝する。日本酒の若干の糖分や梅干しのクエン酸などを効率よく摂取できて、だるい疲労感を感じたときにはぴったりだ。
夏野菜であるナスとも相性が良く、さっぱりとした揚げナスのマリネはとびきりおいしい。一口大に切り素揚げしたナスに、つるむらさきや鰹節、煎り酒で和えるだけ。また白身魚の刺身をいただくときは、いつもの醤油を煎り酒に。白身魚の繊細な香りを引き立ててくれる。フレッシュサラダに煎り酒とオリーブオイルを合わせたもので味わってもおいしい。