生産地、静岡でしかできない体験を静岡出身のモデルKAINO Yuさんが巡る。茶栽培地に赴き、新しいお茶の魅力に着目し嗜み方をお伝えします。
茶畑の真ん中で心が和む
「茶の間」でお茶会
静岡県中西部にある牧ノ原は、標高100〜200mの台地にある。海沿いの街並みを見下ろせて、遠くには富士山、その先にある駿河湾まで見渡せる。そんな絶景の茶畑の中で自由にお茶を楽しんでもらおうと作られた「茶の間」。今回は特別に、お茶農家3代目の柴本俊史さんが案内してくれた。
傾斜の茶畑を10分ほど登ると、ユーカリの木で出来たデッキが設置されている。様々な種類の茶葉を用意してくれて、まずはどんな味なのかをイメージし、それぞれの色味や香りを堪能する。
「これは生姜の香りがするでしょう。ジンジャーリリーという品種で、香水にも使われている香りの強い花を緑茶に吸わせているんですよ」
お茶の特徴を正確に捉えられるように鑑定用の茶器で、老梅花のお茶、烏龍茶をベースに焙煎した煎茶、ほうじ茶などを順々に飲み比べてみる。実際の茶畑を見下ろしながら、興味深い説明をしてくれるのが楽しい。
「うちのお茶は農薬も使わず無肥料で育てているので、本当に純粋なお茶だけの味がしますよ」
お茶愛を語る柴本さんは茶葉を卸すだけでなく、自ら山羊農法で完全無農薬な釜炒り茶を作っている。飼育しているヤギの親子は繁茂した雑草をよく食べ、人間が作業しにくい傾斜地の田んぼや畑にも入り、ムシャムシャと除草もしてくれる。糞は堆肥としてお茶の肥料にもなるので、持続可能で無農薬のお茶を育てている。
「夜のお茶会もいいと思いますよ。お酒ではなく、“お茶で飲み会”。ひとつの新しい世界が広がるのではないかなと思います」。
都会の喧騒を離れ、茶畑の広がる見晴らしの良い空間には爽やかな風が吹く。鳥の声を聞きながら、こんな美しい景観での一服もこれまた一興。
釜炒り茶柴本
静岡県牧之原市勝俣2695
0548-22-2438
kamacha.jimdo.com
茶の間の設置茶園は、富士市、静岡市、牧之原市など5か所ある。
お茶とクラフト。温もり感じる器との出会い
茶市場を中心に、問屋や工場が集まる静岡市葵区。約170年以上前からお茶を作り続けている鈴和商店が営んでいる「茶屋すずわ」は、もともと茶工場内のトラック駐車場だった場所に2年にオープン。金属製の大きな扉を開けると、木々の温もりが溢れる空間が広がる。6代目の渥美慶祐さんは、あらゆる木材や鉄、真鍮などの金属好きが高じて山小屋のようなお店を作られた。清水港からもらってきたというマグロを運ぶ木材を壁にしたり、ダムで拾ってきた流木や趣きのある真鍮製のライトなどが並ぶ。
「経年変化するものが好きですね。この素材をお茶に落とし込めたらどうなるんだろうと。急須などの茶道具や茶器も、年月が経って美しいものがあるじゃないですか。それで、お茶とクラフトが合うかなと思いまして。器に関わっていると、作家さんとも直接知り合うことになり、作ってもらうこともあります」
取り扱っている作家さんのイベントやハンドメイドの展示会などのフリーペーパーも置かれていて、ここから温故知新のお茶カルチャーを発信している。
クラフトの制作背景や、作家さんとの関係が深い茶屋すずわでは、きっとお気に入りの茶碗や道具が見つかる。お茶と繋がる暮らしのものを通じて、こんな時代に心を豊かにさせてくれる。
茶屋すずわ
静岡県静岡市葵区安西3-68
054-271-1238
平日10時〜16時半、第2・4土曜 11時〜18時
休業日 木・土曜・日曜日・祝日
モダンなお土産&茶店処でほっと一息
「静岡の代官山とも呼ばれているお洒落なスポットですよ」と、KAINO Yuさんが話す日吉町の複合ショップの中に茶店chagamaがある。創業140年のマルモ森商店が営んでおり、スタイリッシュな店内には様々な産地の茶葉を約70種類常備。かわいらしい茶釜に陳列されていて、すべて試飲できる。入り口にあるカウンターでは、茶葉をエスプレッソマシーンで抽出する煎茶エスプレッソや焙じ茶ラテなどをテイクアウトが出来るので、近隣の散歩のお供にも。茶葉には、ミントやバジル、シナモンや生姜などのハーブを煎茶や焙じ茶とブレンドしたシリーズもあり、新しい味にも出逢えるはず。中身が見えるように透明な袋に50gの飲みきりサイズで梱包されたパッケージは、ギフトにも嬉しい。
「医療用のUVカットを加工しているんですよ。お客様の目に触れた方が安心していただけるかと思いまして」
カフェ感覚で気軽に楽しめて、お土産にも自宅用にも気の利いた茶葉を買うことができる、とっておきの立ち寄りスポット。
chagama
静岡県静岡市葵区鷹匠2-10-7 パサージュ鷹匠1F
054-260-4775
10:00~19:00
休業日 月曜(祝日は営業)
http://www.ochanet.com/chagama
お茶とお酒のあらたな出逢い
粋な宵茶で乾杯〈DAY BREAK Liquor&Coffee〉
倉庫を改装したというコンクリート壁のインダストリアルな店内は、シックな雰囲気。1日の旅の終わりにここで味わえるのは、吟味された茶葉をジンやウォッカなどのお酒を使った様々なカクテル。水出しならぬ、酒出しで「宵茶」という総称で呼ばれている。
「一杯目は、去年の新茶を4日間ウォッカに漬けて抽出後、トニックウォーターで割った爽やかなカクテル。次に、奄美の紅さんご黒糖焼酎にほうじ茶の茎を入れてジンジャエールで割ったジンジャーハイをどうぞ」
中には、96°のスピリタスで割った焙煎烏龍ショットや、熟成した紅茶をウィスキーに漬け込み、ソーダで割った焙煎紅茶のほろ苦ハイボールなど、お茶カクテルを楽しめる。茶葉は茶師の本多茂兵衞さんが監修している。お茶の味と香りがダイレクトに伝わるよう、相性の良い組み合わせを探し求めた。今お茶の産地・静岡まで来たならば、お茶とアルコールのマッチングで素敵な夜を締めたいところ。ローカルが集うカフェ&バーで、新しい夜を満喫したい。
DAYBREAK Liquor&Coffee
静岡県静岡市葵区伝馬町20-12
050-5264-6420
14:00~17:00、18:00〜24:00休業日 月曜(不定休あり)