春先に種を蒔き、およそ半年かけて地中深くまっすぐに伸びて実りのピークを迎えるごぼう。根っこの部分を食すということもあり、ほかのどの野菜よりも深く土の風味を感じることができる。

旬は秋だが、「しっかりと根を張り、家系が代々続く」と言われることから、古来より正月の食材としても重宝されている。正月にふるまわれる和菓子「はなびら餅」の芯にもごぼうの甘煮が使われており、見かけは地味だが、いかにごぼうが縁起のよい食材として一目置かれてきたのかがわかる。

きんぴらごぼうやかやく飯、豚汁にけんちん汁、柳川鍋にきりたんぽなど、ごぼうがなければ始まらない昔ながらの日本のおかずは数え切れず、手先が冷え始めた頃にふと食べたくなるのは、滋味あふれるごぼう料理だったりする。ごぼうは揚げ物にしてもコクが出て美味。薄切りにして素揚げしたごぼうを赤だしの味噌汁にたっぷりと入れ、すだちの皮をしゅっとすりおろす。するとたちまち身体は、秋から冬へギアチェンジする。