2020年1月、満を持して日本上陸を果たした〈allbirds〉は、まず何よりもメリノウールで作られたとても履き心地の良いシューズだ。ニュージーランド生まれの創業者ティム・ブラウンは、サステナブルで機能的なウールがなぜ、シューズに活用されていないのかという素朴な問いからスタートし、再生資源の専門家であるジョーイ・ズウィリンジャーと共に、自然素材にこだわった〈allbirds〉の製品を開発した。

世界一快適なシューズ〈allbirds〉は、肌触りの良いメリノウールや、ユーカリの木の繊維から作られたアッパーが足を優しく包み込み、サトウキビから作られるソール(その名もSweetForm™️)が柔らかなクッショニングを約束する。

しかし、米国のミレニアル世代を中心に圧倒的な支持を受けているのはそれだけが理由ではない。なによりも気候変動に対応するという「Purpose-driven(目的意識)」が発想の源にあり、それを「イノベーション」によって実現し、「D2C=Direct to Consumer」という販売手法によって、消費者とのエンゲージを確立する。その企業としての在り方が新しい世代の心を捉えているのだ。

公益企業という道

〈allbirds〉は「B-Corp」認証を受けている数少ない企業のひとつだ。B-CorpのBはBenefit(利益)だが、従来の企業のようにそれを会社と株主だけの利益としていないところが大きなポイントだ。環境やコミュニティ、従業員もステークホルダーに加え、公の利益を広く追求している企業が認証を受けることができる。日本ではまだ認知が低いが、patagoniaやkickstarterといった企業が加わっていると聞けばイメージも膨らみやすい。

〈allbirds〉の起業の源には気候変動をはじめとした環境負荷に対する問題意識があるという。“環境”を重要な社会のステークホルダーとして捉え、その保護を目的として、Purpose-driven(目的意識)で企業活動を進めていることが認められた。世界では年間200億足以上のシューズが生産され、その95%が廃棄されている。その環境負荷は計り知れないが、〈allbirds〉は環境に配慮した代替素材を選択することでこの問題に対応しようとしている。

まずウールは自然由来の素晴らしい機能性を持った素材だ。温度を調節し、湿気を逃し、匂いを抑える働きがある。また、ユーカリの木の繊維は柔らかく、冷却効果を持つという。サトウキビは、処理の過程でできるバイオマスを燃料とすることができ、翌年の収穫のための肥料としても使用できる。また、生育中に空気中の二酸化炭素を固定する効果もある。そして、これらの素材は天然由来であるため、すべて土に還ることができるという。

D2C=消費者と直接つながるメリット

日本上陸に合わせて来日した共同経営者ジョーイ・ズウィリンジャー氏によれば、現在、イーコマースの浸透によって、リテールは高いストレスに晒されているという。そしてメーカー、ブランドはそのリテールのストレスの連鎖を受け、安価に大量販売する製品の開発を余儀なくされている。この悪循環が環境への負荷の原因のひとつともなっている。それを解決するのがD2C(Direct to Consumer)だという。

共同経営者のジョーイ・ズウィリンジャー氏はシリコンバレーを拠点としたエンジニアであり、再生資源の専門家でもある。

まず、中間費用を省くことによって、高品質素材に投資することができ、その価値を消費者に還元することができる。実際、〈allbirds〉のシューズは、高品質な天然素材を用いていながら税込1万2,500円~1万7,000円と手の届く価格に抑えられている。また、消費者とのタッチポイントをダイレクトにすることで、細やかなコミュニケーションが可能となり、消費者のフィードバックを迅速に製品に反映させることができる。その結果、高いエンゲージメントが結ばれるのだ。では、〈allbirds〉がエンゲージを結ぶ消費者とはどんな人たちなのかと質問すると、Allbirds合同会社のマネージングディレクター竹鼻圭一氏は次のように答えてくれた。

「社会に非常に興味があって、アドベンチャラスで好奇心が強い人たち。男女は関係なく、20、30、40代のそんな人たちをイメージはしています。ただ非常に大事だと思っているのは、男性、女性、若者、年配とかといったことではなく、皆さんが楽しんで頂ける、そのパートナーになれる靴だなということ。先ほど世の中のカジュアル化という話もありましたが、ひとつの靴でディナーにも、会社にも、友達とコーヒーを飲むときにも履いてもらえる、多様化する世界の中でマッチする靴だと感じています。」

日本での代表を務める竹鼻圭一氏(左)地球環境に配慮したブランドが、これからの日本で支持される土壌が整ってきていると語る

D2Cにおいてはストアとオンライン販売の補完関係も明確となる。日本の一般的なブランドのオンライン販売の割合は5〜10%ということだが、〈allbirds〉が4月にローンチする予定のECでは将来的に50%を目指し、真のD2Cブランドとなることを目標に据えている。一方で、ストアのあるコミュニティーへの積極参加や、ローカルへの敬意を表した店舗限定製品の提案などリアル店舗ならではの役割も明確に備えている。

原宿のストアでは日本にインスパイアされたローカルカラーのシューレースを手にすることができる

〈allbirds〉は、日本のサステナブル消費の起爆剤となるのか

海外の、特に若い層で主流となっているサステナブル企業への高いエンゲージメント。その波はまだ日本に届いていないのが実情だ。しかし、需要が縮小していく今の社会においては、企業の価値も変化していくのが必然だろう。B-Corp認証、サステナブル、イノベーション、D2Cといったこれからの企業にとって目指すべき指針を備え、かつファッショナブルで快適な〈allbirds〉のシューズが、日本の消費者に新しい風を送り込めるか期待したい。

allbirds原宿
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前1-14-34
営業時間:11:00~20:00(不定休)
www.allbirds.jp
@allbirdsjapan
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