食の集まるところ、人が集まる――。NYに生まれ始めた、コミュニティがつなぐ小さなグローサリー。コンビニ的でありながらも、安心できる品質と美味しさを約束し、ライフスタイルへの意識が高い。選択肢の多い時代だからこそ、人は、迷いのない軸を求める。NYが選んだのは、“地元”に根を張る、深さだったのだ。
S&S CORNER SHOP
「現代の食に対して何か大きなムーブメントを起したいというのでなく、あくまでもオプション(選択肢)として、新しい店を作りたいと思ったんだ」というのは、〈S&S CORNER SHOP〉の店主、クリス。彼は5年前にロングアイランド島のスプリングスに移り住み、ローカルの食料品とハンドメイドのエプロンなどの雑貨、日用品を扱う店を開いた。「個人商店だけど、こんなに質の高いものが買えるよ、と提案したかった。でも、他がいけないというのではなく、僕らがいいと信じているものが、大手スーパーになかったから、自分で売ることにしただけ。」元々マンハッタンに住み、ブルックリンにアトリエを構え、祖父から受け継いだエプロンを製造販売していたという。モントークから30分のスプリングスは、サーファーやアーティストの別荘地があるとはいえ、来た当初はコミュニティがなかった。そこで、この店を起点にこれから仲間が集まる場として形成して行こうとしている。
クオリティを追求すれば、価値はどうしても高くなる。そうすると、安価なものはどこにでも売っているので、小規模経営は難しくなる。だが、しっかりと地元に根を張り、確かなコミュニティを築いていくことができれば、ビジネスは成り立つはずだ。