食の集まるところ、人が集まる――。NYに生まれ始めた、コミュニティがつなぐ小さなグローサリー。コンビニ的でありながらも、安心できる品質と美味しさを約束し、ライフスタイルへの意識が高い。選択肢の多い時代だからこそ、人は、迷いのない軸を求める。NYが選んだのは、“地元”に根を張る、深さだったのだ。
EASTERN DISTRICT
NYの食のブームとして熱狂的に盛り上がるクラフトビール。特にブルックリンのブルワリー(醸造所)の人気は非常に高く、アーティストのファクトリーが次々とブルワリーに生まれ変わっている。最近では自宅ガレージでビールを醸造する人もいるほど。
そんなクラフトビールの品揃えで評判が高いのが、ブルックリンの住宅街グリーンポイントにある〈EASTERN DISTRICT〉だ。ビール好きのクリスとチーズ好きのベスのカップルが始めた店で、2010年にオープン。家庭の食卓で生ビールが楽しめる量り売りも人気だ。また、世界各国のビールなど、ここでしか手に入らないものもあり、NY中のビール好きが集まる。一方チーズは、ローカルの家族経営のファームなどをセレクト。輸入チーズが主流の店が多い中、極上のチーズをこんな小さい店で扱えるのは、生産者と店の信頼関係があるから。
おいしいチーズがあれば、そこには美味しいサンドイッチもある。ブルックリンでつくられたレバノン風のスプレッド(パンなどに塗る食品)やジャム、マスタード、ピクルスなどにもローカル食材を使い、それらの商品の販売もしている。実は、この店のオーナーはすでに彼らではなくなっていた。この店を譲ると、牧場経営に踏み出したという。彼らは生産者としての道を歩み始めていた。