食の集まるところ、人が集まる――。NYに生まれ始めた、コミュニティがつなぐ小さなグローサリー。コンビニ的でありながらも、安心できる品質と美味しさを約束し、ライフスタイルへの意識が高い。選択肢の多い時代だからこそ、人は、迷いのない軸を求める。NYが選んだのは、“地元”に根を張る、深さだったのだ。

Marlow & Daughters

かつては治安も悪く、倉庫しかなかったこのエリアに突如として1998年に現れたレストラン〈DINER〉。オーナーであるアンドリュー・ターロウは、この店を皮切りに、カフェレストラン、ベーカリー、ホテル、雑貨店など数店舗を経営。店を構えるウィリアムズバーグ地区にコミュニティを生んだ。人の流れも変えるほどの成功をもたらしたのは、“ローカル”というコンセプトにある。彼の店では、食材のほとんどがNY近郊などの地元産。さらに、手作り、ハイクオリティ、安全、小規模という信頼できる生産者に限っている。例えばグラスフェッドビーフ(放牧の牧草牛)のファームは、手がかかるゆえに小規模でなければできない。そんな地元のビジネスをサポートしていく意味もあるのだ。

2008年に誕生した〈Marlow & Daughters〉は、彼のレストランで使う食材を手軽に購入できる、“Farm-to-Table”(農場から食卓へ)の食料品店。メインは一頭買いの本格的なButche(r精肉店)だが、野菜、乳製品、調味料も揃う。このローカル重視の店は、ニューヨーカーの共感を大いに得た。その背景には、9・11やリーマンショックなどの危機もあるが、大量生産品で育ってきた消費者による、潜在的に芽生えた食の安全問題への意識があった。

Marlow & Daughters
精肉を中心とした地元産の食品を扱う。NYのアップタウンにあるファームから一頭買いをしているので、鉄のエプロンをしたブッチャーが店内でカットを行う。店構えは小さいけれど、日用品など品揃えはスーパー並み。
95 Broadway Brooklyn NY 11249
TEL + 718-388-5700
営業時間 月〜土11:00 〜 20:00、日11:00 〜 19:00
marlowanddaughters.com