東西に長い日本では、初秋から晩秋にかけて西から徐々に新米の便りがやってくる。10月も末になると、北国のはざ掛け米がようやく出回り、新米が出揃う。はざ掛けとは、刈り取った稲を逆さにして天日自然乾燥させること。稲刈り後の田んぼに見る、かつての日本の昔懐かしい風景でもある。近代になって機械乾燥の技術が進歩し、出荷の時期が早まってはいるが、じっくり天然熟成されながら干された新米の時期は意外にも秋が深まってから。
とれたての新米が手に入ると、いつも以上にお米を美味しい状態で食べたくなる。炊き方は炊飯器、土鍋、石鍋などいろいろあるけれど、じつは炊飯後にいったんお櫃におさめることこそお米を美味しくいただくコツ。炊きたて熱々のご飯ははもちろん幸せな気分になるが、ここはグッと我慢。お櫃のなかで余分な水分が調整され、ほの温かくなじんだ頃に美味しさのピークを迎える。このタイミングを逃さずに食べると、お米の品種が持つ個性も敏感にわかる。どんなお釜で炊こうか迷っているとしたら、まずはその前にお櫃のある生活からはじめてみてほしい。