あんこうは春の産卵に向けて肥大化し、水温が低くなることで身が締まるため、冬の鍋シーズンにもっとも味が良くなる。産卵後は、極端に味が落ちるので食すなら今がチャンス。オスは小さく、メスは1.5mと巨大であり、おいしいのは断然メス。高級なイメージがあるが、最近は輸入ものも出回り価格も安定しているため家庭でも食されるようになってきた。
とはいえ、あんこうを自分で捌くのは至難の技。見た目がグロテスクということもあるが、粘液に覆われていて身も柔らかいのでまな板の上では滑ってしまう。市場でも吊るし切りという独特の方法が用いられているぐらいなので、自宅で食す場合は魚屋に頼むか、すでに捌かれたものを購入するとよい。
肝、胃袋、皮、エラ、ヒレ、卵巣、そして身をアンコウの7つの道具と呼び、これを野菜と煮込んであんこう鍋にする。肝を溶いた濃厚なソースでいただく鍋は、冬の至福である。あんこうといえば、あん肝も外せない。“魚のフォアグラ”とも呼ばれているが、そもそも内臓を食べるのは日本だけ。あんこうを食べる習慣があるスペインでも内臓は捨ててしまうという。肝をつなげてホイルでキャンディ状に丸めて蒸せば、自宅であん肝をつくることもできる。身にはほとんどエネルギーがないあんこうだが、肝臓には抗酸化作用でがんや老化を防ぐビタミンAを大量に含む。ただし食べ過ぎは禁物。脂溶性ビタミンのため過剰症にならないよう、適度に嗜む程度がよい。