季節によって主産地が代わり年中安定して手に入るねぎだが、本来は晩秋から早春までが旬。白い部分を食べる「根深ねぎ」は主に関東で、緑の葉部分を食べる「葉ねぎ」は主に関西で栽培されており、そのうち冬を待っておいしさが増す「根深ねぎ」の一種である下仁田ねぎは収穫できる時期が11〜2月と短い。まさに今が食べ時の食材である。

江戸の大名や旗本がその味わいの虜になったことから“殿様ネギ”の異名を持つ下仁田ねぎは、身が太く、肉質が柔らかい。加熱すると甘くなる特性を生かし、産地では焚き火にねぎをそのまま放り込み、こげた皮をむいて、とろとろとした甘い部分を食べる「大名焼き」を楽しむという。

この大名焼きに似た食べ方で、スペインのカタルーニャ地方で冬に楽しまれているカルソッツと呼ばれる料理がある。作り方は簡単。ねぎをよく洗ってまるごと天板に並べ、230度くらいのオーブンへ。表面が真っ黒に焦げ、太いところに金串を刺してみてすっと通れば焼き上がり。熱々のうちにトングなどで焦げた皮をむいてそのまま持ち上げ、シェリービネガーとオリーブオイル、塩を混ぜ合わせたものにつけて根もとのほうからがぶりとかぶりつく。ロメスコソース(ローストしたニンニク、パプリカ、アーモンドなどをオリーブオイルや酢と一緒にピュレ状にしたソース)で食べるのもおすすめ。太くて甘みのある下仁田ねぎそのものの味を、存分に楽しめる一品だ。