薄切りにして水切りした豆腐を油で揚げて作る油揚げ。原料は大豆と油だけのシンプルな食材であるにもかかわらず、料理に使うとうまみとコクと満足感が生まれ、主役としても脇役としても存在感を発揮する。

青菜や白菜がおいしい冬の間は、青菜の煮物に加えて。小松菜やかぶの葉、ほうれん草などをだし汁で煮るときに油揚げを刻んで一緒に煮る。味付けは酒と醤油、塩だけで十分。青菜はさっと煮た程度でもよし、くったりとするまで煮ても美味。シンプルな炊き込みご飯にも油揚げは欠かせない。たとえば大根とじゃこの炊き込みご飯を炊く際に、油揚げをフードプロセッサーで細かくそぼろ状にしたものを加えて一緒に炊き込む。すると米全体に油分が行き渡り、味わいは主張ぜずともこくと旨味のある炊き込みご飯になる。たけのこの炊き込みごはんなどにもおすすめだ。

油揚げを主役で使うとすれば、稲荷寿司。油揚げを甘辛く煮含めた専用のものも販売されてはいるが、好みの甘さや大きさがあるので、まとめて作って小分け冷凍しておくといつでも好みの稲荷寿司を食すことができる。今の時期であれば柚子の皮のみじん切りとごまを混ぜ込んだ酢飯で作る「柚子胡麻稲荷」、春先になると束の間出回る葉わさび(さっと湯通しして細かく刻んで塩で和えたもの)とごまを混ぜ込んだ「葉わさび稲荷」、初夏にはみょうがや新生姜の甘酢漬けを混ぜ込んだものなど季節によって酢飯を自在に変えて作ってみるのも楽しい。