一年通して出回っているほうれん草だが、別名「冬葉」と呼ばれるほど冬野菜の代表格である。冬の間に霜に当たると、凍らないよう葉に糖分を溜め込んで身を守るため、甘みが格段に増しておいしくなる。鉄分やビタミンが豊富で、とくにビタミンCは夏に採れるほうれん草より冬の方が3倍近く多く含まれるとも言われている。

大きく分けて葉がギザギザした東洋種(在来種)と、葉が丸みをおびた西洋種があるが、最近では通年生育可能な西洋種とハイブリッド種(交配種)に押されがち。東洋種はほとんど市場から姿を消してしまったと言われているが、根が赤く、葉が尖った日本在来の品種作りを続けている生産農家もあるので、見つけたらぜひ、その甘みを味わってみてほしい。

甘みのあるほうれんそうが手に入ったら、ほうれんそうのバター蒸しをぜひ。よく洗ってざく切りにしたほうれんそうを厚手の鍋に入れ、たっぷりのバターと塩少々を入れて蓋をし、強火で蒸し焼きにする。かさが減ったら完成。肉や肴料理の付け合せにぴったりで、作るとあっという間に食べきってしまうおいしさである。