年始からタイ北部のメーホンソン県にあるパーイという田舎町に来ている。チェンマイからバスでおよそ3時間半、ラオスやミャンマーへ抜ける山道の中間点にある。元々はタイ人が大好きな避暑地なのだが、近年は欧米のバックパッカーに人気のある町だ。温泉卵が食べられるターパイ温泉公園ほか、温泉スポットがいくつかあるのだが日本人には水温が低すぎるので、ハーバルサウナでお茶を濁しつつ、朝からヨガをしたりタイマッサージをしたり瞑想をしてみたり、リトリートを満喫している。

そんな、心身をリフレッシュさせる毎日に欠かせないのが、まったりとしたお酒タイムである。養生とアルコールはあまり相性がよくないのでおおっぴらには言えないけれど、それでも異国のお酒を飲むことは旅の醍醐味なのでそれだけは自分に許している。

タイのお酒というとシンハーやチャーンなどのビールが有名だが、メコン、ホントーンなどのウイスキーもローカルには人気だ。タイウイスキーの特徴は、大麦やトウモロコシではなく米と廃糖蜜を原料としていること。ウイスキーというより米焼酎、もしくはラム酒に近い。タイ北部ではセンソムという銘柄が有名で、食堂や屋台ではローカルはこれをソーダ割で飲んでいる。べたっとした甘さのメコンウイスキーに比べるとすっきりとして飲みやすいのでレストランではもっぱらセンソムのソーダ割、もしくはお湯割(夜は寒いのです)を飲んでいるが、ちょっとおしゃれ風味なバーに行くとタイオリジナルのカクテルを勧められる。

例えば、バンコクのフォーシーズンズホテルが考案したトムヤムサイアム。ウォッカをベースに、トムヤムクンに使われるハーブであるカフィアライム(コブミカンの葉)、レモングラス、チリ、ライムジュースなどを合わせたロングカクテルだ。タイを代表するスイーツ、マンゴースティッキーライスをイメージしたというマンゴーのカクテルも発見した。米から作られたウォッカにマリブ、マンゴージュース、レモンを合わせ、ココナッツクリームを浮かべる。甘くて強い、トロピカルなショートカクテルだ。

とはいえ、実はいちばん気に入っているのはホームメイドカクテル。なぜならタイには酒類販売に時間制限があって、昼は11時から14時、夕方は17時以降でないと買えないから(ライセンスのあるレストランやパブは例外)。ビールでも買ってゲストハウスで飲もうか、と思ってもそうは問屋が卸さない。ので、センソムなりローカルのラムなり、ベーススピリッツだけを手に入れておき、屋台でフレッシュなココナッツジュースやトロピカルフルーツのスムージーを購入する。街角の屋台では、20〜40バーツ程度で季節のフルーツをその場で絞ってスムージーやシェイクに仕立ててくれるからありがたい。目下のお気に入りはパッションフルーツジュースとウォッカの組み合わせだ。バナナとパッションフルーツのシェイクにラムを加えたものも最高。フレッシュ、とかしぼりたて、と言えば、なんだか健康にいいことをしているような自己満足にも浸れるし。

仏教系の禁酒日や禁酒時間帯もこれで回避!なんて油断していると、ついつい飲みすぎていつの間にか夕方になり、ヨガにも行かずゴロゴロする羽目になる。結果、リラックスはできてもデトックスには程遠い毎日を送っている。リトリート、ハードル高いぜ。

倉石綾子

女性誌編集部を経てフリーのライター、エディターに。旅、お酒、アウトドアを主軸にした記事を雑誌、ウェブメディアで執筆する。アウトドア×日本の四季× 極上の酒をコンセプトに掲げる酒呑みユニット、SOTONOMOを主宰(facebook.com/sotonomo/)。著書に『東京の夜は世界でいちばん美しい』(uuuUPS)。