日本で古来から伝わるドライフルーツといえば、秋に収穫した渋柿の皮を剥いて乾燥させた干し柿。民家の軒先に吊るし干しされている光景は冬の風物詩であり、郷愁を誘う。干し柿の表面には白い粉(こ)がふいているが、これはブドウ糖と果糖の混合物であり、問題なくそのまま食べることができる。

昔は天然の甘みとして貴重な存在でそのまま食すことを目的に作られていたと考えられるが、現代ではドライフルーツとしての認識の方がはるかに強い。食べ方もたとえば、洋酒に浸してふやかした干し柿をスパイスを効かせたパウンドケーキに焼きこんだり、ヨーグルトの中に入れてややふやけた状態で食べたりと自由度がぐんと増した。レモン汁に浸してふやかして刻んだ干し柿とブルーチーズ、大根やクレソンなどを和えた複雑な味わいのサラダも、冬ならではである。

最近では厚切りのバターを干し柿で挟んだ「柿バターサンド」という日本酒や白ワインと合いそうな食べ方もあり、干し柿の可能性がますます広がってきた。干し柿自体にしっかりとした甘味があるので、刻んだ干し柿とサワークリームを混ぜあわせるだけのディップも白ワインによく合う。ひと昔前までは干し柿を使った料理といえば「なます」や「白和え」ぐらいしか存在しなかった時代を経て、もっと柔軟な発想で日本の食文化を楽しむ時代になっている。