広島県・尾道の山側で最も大きなアパートメントが宿泊設備を伴った多目的施設〈〈LOG(ログ)– Lantern Onomichi Garden- 〉〉へと生まれ変わった。

今回のプロジェクトは、インドの建築集団、スタジオ・ムンバイを率いる建築家ビジョイ・ジェイン氏が手がけ、アパートメント1棟を丸ごとリノベーションする計画。日本ではもちろんのこと、世界的に注目されているスタジオ・ムンバイ。彼らが手がけた建築としては、同施設が日本初の建築であり、アジアで唯一宿泊可能な施設となる。彼らの建築は、常に「プラクシス(実践・検証)」を重ねることで生まれ、多くの人が手作業で携わることによって独特な空間を創造する。着工から随時更新され続けていた〈LOG〉のInstagramでは、オープンまでのリノベーションのプロセスが発信されており、彼らの「プラクシス」の様子を垣間見ることができる。

昭和38年に建てられた、鉄筋コンクリート3階建ての石垣のあるアパートメントは、尾道・千光寺下、山手の中腹に位置し、志賀直哉が『暗夜行路』を書き下ろした旧居と近い標高にある。ジェイン氏は志賀直哉の小説『暗夜行路』の一節にインスピレーションを受け、すべての部屋に“縁側”を設け、あえて3階にのみ客室をつくった。建築と文化の融合した客室からは、志賀直哉と同じ目線で尾道の景色を眺むことができる。

客室以外にも、島や中山間地域の野菜をはじめ、肉や魚などの地元の食材を楽しめるダイニングや、スタジオ・ムンバイのオリジナル家具を扱うショップなどを備えている。朝食には新鮮な果物や野菜を使ったマフィンも。

四季に逆らわず、自然のもの、土地の恵みを無駄なくいただく〈LOG〉は、暮らしの豊かさを探る場所であり、プロジェクトなのだ。

〈LOG〉のリノベーション計画には、尾道を中心に地域再生を手がける〈ディスカバーリンクせとうち〉の想いと、スタジオ・ムンバイのジャパンブランチとして現場で対応する香川県の六車誠二建築設計事務所の協力が欠かせない。人々が行き交うことで、地域の魅力を伝える場所にしたいというそれぞれの想いがリンクして〈LOG〉のプロジェクトへと繋がった。