no.23 | リサ・ラーソンのゆのみマグ
物心つく頃から日用雑貨が好きで、特に食器には強いこだわりを持っていた。最初に自分の意志でマグカップを買ったのは10歳くらいの時だったと記憶している。それはとても派手なストライプ柄のマグカップで、当時はしたり顔で使っていたが、今となっては思い出すたびに赤面しそうになるほど野暮ったい代物だった(趣味の悪いデザイナーズマンションに貼られているストライプ柄の壁紙を見るたびに、僕はそのマグカップのことを思い出して胃の辺りが痒くなってしまう)。
それから約15年。失敗を何度も繰り返しながらようやく出会えたのが、今回紹介するプロダクト『ゆのみマグ』だ。
『ゆのみマグ』はその名の通り、ゆのみのような形をしたマグカップだ。デザインしたのは北欧を代表する作家のリサ・ラーソン。『おさけとり』や『しんじるたぬき』など、リサ・ラーソンは日本文化の影響を感じさせる作品を数多く発表しているが、僕はその中でも特別このプロダクトを気に入っている。
言うまでもないようだけど、マグカップは世の中にいくらでもある。しかし、100%しっくり来るものを探すのはかなり困難だ。これは自分の好みになるが、まず目に入るところにロゴや模様などが入っていないほうが好ましい(底面にメーカーや作者のサインが控えめに印されているくらいがちょうど良い)。となると必然的に無地のものを探すことになるが、あまりにシンプルすぎると今度は素っ気無くなってしまう。そうかと言って作家の一点物を選んでしまうと、普段づかいするにはちょっとしんどい。このあたりの塩梅が非常に難しいのだ。
では、この『ゆのみマグ』はどうだろうか? ボッテリとしたフォルム、ニュッと突き出した持ち手……。お世辞にも洗練されたデザインとは言えないだろう。しかし、使っているうちにどんどん引き込まれるような、奥行きの深い魅力と個性を持っているように僕は感じる。
特に気に入っているのが、このプロダクトのキモでもある持ち手部分だ。まるで鳥のくちばしのようで、見れば見るほど愛着を感じてしまう。ただ可愛いだけではなく、この突起があるおかげで、器を手で包み込むようにして飲むときにより持ちやすくなっている。よくよく考え込まれたデザインだな、と使うたびについ感心してしまう。
量販品にはない個性がありながら、作家物のような堅苦しさは無い。”大量生産”と”手仕事”のちょうど中間にあるような、絶妙な佇まい。それが、僕が『ゆのみマグ』を愛用する一番大きな理由だと思う。
湯のみをお手本にしているのだから当然のことかもしれないが、温かいお茶を飲むのにもぴったりだ。起きがけに目をこすりながら日本茶を淹れ、手のひらでぬくもりを感じながら、その日の予定をゆっくり考える。今年の冬はこういうことを何度かやってみたが、本当に有意義な時間になった。もう春がそこまでやってきているが、朝方はまだまだ寒い。ぜひこの『ゆのみマグ』と一緒に、素敵な時間を楽しんでみてはいかがだろうか?
ゆのみマグ [波佐見焼] ¥3,456(税込)/LISA LARSON
LISA LARSON 公式オンラインショップ https://www.lisalarson.shop/