ゴードン・マッタ=クラーク Photo: Cosmos Andrew Sarchiapone
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
1970年代にニューヨークを中心に活躍し、35歳の若さで亡くなったゴードン・マッタ=クラーク(1943-78)はアート・建築・ストリートカルチャー・食など多くの分野でフォロワーを生み続ける先駆者であった。軽やかでクール、そしてポエティックな彼の活動は、没後40年となる今日もなお、世界中の注目を集め続け、また『PERFECT DAY』が投げかけるコンセプトとも共鳴する。
アジア初回顧展となる本展では、彼の多面的な活動を、彫刻・映像・写真・ドローイング・関連資料など約200点で紹介。作品の多くが個人蔵や欧米の著名美術館所蔵のため、これまでアジアではまとまった形で紹介される機会が無かった彼の活動だが、本展覧会ではフルスケールで公開されるとあって必見である。
《スプリッティング》1974年 ゴードン・マッタ=クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
マッタ=クラーク ARTとFOOD
彼の創作の歴史の中でも注目したいのが食との深い関わりである。大学卒業後すぐにニューヨークに転居し、食べ物や料理をテーマにインスタレーションやパフォーマンスの発表を始める。そして友人のアーティストと共同してレストラン「フード」を設立。「フード」の運営には、彼自身だけでなく、約60名にアーティストがさまざまな形で参加し、彼はソーホーのアーティスト・コミュニティーにおける中心人物となっていった。食や料理がしばしば作品の着想源となった彼にとって、肉や魚、野菜などを扱う市場は、都市の消費サイクルのなかで文化と自然との接点があらわになる重要な場所。
食への関心は、生命が人間にもたらされ、料理によって質が変わり、消化されていくプロセス、さらにはこのプロセスによって形づくられるコミュニティーへと向かっていく。レストランという場所を通じて、アーティストの交流の場を作り出した彼の活動は当時どのような注目を集めたのか。
レストラン「フード」の前で、ゴードン・マッタ=クラーク、キャロル・グッデン、ティ
ナ・ジルアール 1971年 個人蔵 Photo: Richard Landry
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy Richard Landry, The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
《日の終わり》1975年 ゴードン・マッタ=クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
『ゴードン・マッタ=クラーク展』は都市を舞台に活動したマッタ=クラークにとって重要だった5つの「場所」にフォーカスした作品紹介を行う。また1970年代ニューヨークの文化的、社会的背景を示す資料や、現在の東京に関わる資料などを組み込むことで、変転する現代の都市における、マッタ=クラークの実践の今日的意味を浮かび上がらせる。
《ニューヨーク近代美術館のためのプロポーザルNo.4》1978 年 ゴードン・マッタ=クラ
ーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
マッタ=クラークが生きたのは、1970年代の世界経済が爆発的成長を始めるニューヨークという資本主義の実験場。そこで行われた彼の活動の核心とは、豊かなコミュニティーの創出にアートが寄与する方法の模索にある。今日、世界に先立って社会の収縮を迎えつつあるここ東京において、彼のアイデアの数々は、豊かに生きるためにいま何ができるかを、私たち一人ひとりが考えるためのさまざまなヒントを示してくれる。
ゴードン・マッタ=クラーク(中央左)とジェイン・クロウフォードの結婚を祝う友人たちとともに 1978年
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
ゴードン・マッタ = クラーク展
2018年6月19日(火)- 9月17日(月・祝)
10:00-17:00(金・土曜は21:00まで)入館は閉館の30分前まで東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
入場料:一般 1,200円、大学生 800円詳細はこちらから http://www.momat.go.jp