THE NORTH FACE からこの春に展開された新たなコンテンツ「somewhere」。
このプロジェクトは、「somewhere」=“どこかへ” をタイトルに、男女それぞれのパーソナルな動機を出発点とするショートトリップをドキュメントした内容になっており、女優の臼田あさ美は、京都・奈良へ。俳優の奥野瑛太は香港へと旅をしている。

今回「somewhere」に出演した俳優・奥野瑛太氏と撮影を行った写真家・鈴木親氏、スタイリングを担当したスタイリスト・服部昌孝氏の3名によるトークショーが、4月20日(月)にTHE NORTH FACE STANDARD 二子玉川にて開催された。

香港映画が好きで、歩けばジャッキー・チェンが居るかと思っていました。(奥野氏)

奥野:香港は、いろんな雰囲気の人がいる街でした。活気に溢れている反面、どこか憂鬱な雰囲気もあって。電光掲示板が並んでいる裏側では、屋台がたくさんあったり、偽物の商品しか売られていない市場があったり。

鈴木:香港は、どんなにテクノロジーが発達しても生活の一部は変わらない。ハイなところと、ローなところが異常に混在している。そこが一番魅力的だと感じます。例えば、海を渡ったらすぐ超高層ビルなのに、街には人らしさが残っていたり。


俳優・奥野瑛太氏と「撮影中にアドリブで動く奥野氏のことが、だんだんいい男に見えてきた」と話す、写真家・鈴木親氏。

香港は2面性があるところが面白い。(鈴木氏)

鈴木:今回の撮影のイメージは、僕が学生の時に観た映画の中で一番好きな『チャンキング・エクスプレス』っていう映画の20年以上前のリファレンス。実際、街も人もあんまり変わってないし、まるきり同じ場所もある。それがすごいよかったです。街に入り込んで奥野くんの髪の毛をもパリッと、クラシックにして撮影しました。また、香港の観光地で有名なモンスターマンションが人気なのも、“実際に人が住んでいる” というところが大きいと思います。観光に特化しすぎてない、「生活がある観光地」なんですよ。

服部:香港では、どこでも撮れちゃう感じがしました。あと、『眠らない街、東京』っていう言葉がありますが、東京よりも、香港の方が夜は長いですよね。

鈴木:そうですよね。中華圏は朝が遅くて夜が延々と続くんですよ。

服部:夜の10時、11時まで服屋さんが平気で開いているのが新鮮でした。


スタイリスト・服部昌孝氏。「奥野くんはファッションだけでなく、演出込みでお願いしたい人」と話す。

奥野くんは、あんまりファッションすぎなくていいですね。(服部氏)

鈴木:奥野くんは、俳優さんだからか勝手に動いてくれるので、特に何も指示せず遠くから撮ったりと、かなり自由な撮影でした。

服部:スタイリングも6割くらいしか組んでない。そういう意図は最初からあって。せっかく行くし、現地で買えるものは現地でと思って。

奥野:すごいスピード感で仕上げていくんだな、と思ってました。

鈴木:今回は、映画を撮る時のようなスタイリングでしたね。ロケーションとのミスマッチを狙うのではなく、逆に香港の街の中に入っていくような感じで撮影しました。THE NORTH FACEは、生活に結びついているブランドだと思ったから、服のディテールをきっちり写すというよりは、世界観を捉えることができればいいと思ってフィルムカメラでの撮影でした。



撮影:鈴木親

今回の撮影では、外側から別のフォトグラファーが撮影する試みを行っている。ビハインドを撮影したのは、写真家の金川晋吾氏。ファッションシューティングの様子などをドキュメンタリータッチで撮影している。

撮影中、離れた場所に向かう際にも鈴木親氏が「歩いて行こう」と言う理由。

鈴木:撮影では、キーワードとしてわざと観光っぽいところを入れたりしますが、それ以外は歩いて住んでいる人と目線を近くしないと撮れない。だから歩くことはとても必要なことです。somewhereのテーマも『アーバンエクスプローラー』だから、都会を探検しないと。車での移動は、お金で時間を買える利点があるけれど、撮影はそれだけでは済まないですからね。歩くということは、住んでいる人の目線と近いということです。


鈴木親氏が香港・京都・奈良の3都市において撮影した写真展が、4月20日(金)〜5月6日(日)の期間中、THE NORTH FACE STANDARD 二子玉川 3Fで開催。

奥野:冊子にも書かせてもらったんですけど、香港に対しての勝手な憧れがありすぎたんですね。ジャッキー・チェンの映画に染まってるので、街のどこかで酔拳をやりだすおじちゃんが居るんじゃないかと思って、探し求めてました。でも、ジャッキーチェンはどこにも居なかった。とにかく香港の街に憧れてたんです。


somewhereの冊子には、香港での写真の他に、『1ねん2くみ、僕らのホンコン』と題した奥野氏のエッセイも収録されている。

トークショーでは、俳優・写真家・スタイリストと肩書きの異なる3名が、それぞれの視点から香港の街の魅力を語った。「somewhere」では、そんな香港を旅する過程が THE NORTH FACEの春・夏のコレクションを着用した奥野氏をモチーフに写真と映像に収められている。

奥野瑛太
1986年生まれ。俳優。北海道苫小牧市出身。映画『SR サイタマノラッパー』、『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』や『64-ロクヨン』、『3月のライオン』などに数々の話題作に出演。また現在『曇天に笑う』が公開中。

鈴木 親
1972年生まれ。写真家。96 年渡仏し、雑誌『Purple』で写真家としてのキャリアをスタート。『Purple』『i-D』『Dazed & Confused』『Libertine / DUNE』など国内外問わずさまざまな媒体で活躍するほか、メゾンブランドのワールドキャンペーンも手がける。主な作品集に『shapes of blooming』(treesaresospecial刊/2005年)、『CITE』(G/P gallery刊、2009年)。

服部昌孝
1985年生まれ。スタイリスト。静岡県出身。メンズファッション誌『GRIND』や『BRUTUS』などのカルチャー誌から、『VOGUE JAPAN』などの女性ファッション誌も手がける。また『her magazine』や『MUSE』『MISSION MAGAZINE』など海外からのオファーも多い。