別名“ぶどう豆”と呼ばれる黒豆は、大豆の一種。産地としては兵庫県は丹波篠山のものがあまりにも有名で、大粒で黒黒とし、極上品とされている。枝豆から遅れることひと月ほどたった秋(10月初め頃)には、実が黒く色づく手前の「黒枝豆」が出荷され、幻の味として評判が高い。最近では黒豆を使った加工品も多く流通し、黒豆を焙煎した「黒豆茶」は上品な香ばしさとカフェインレスなところが人気。他に黒豆を使ったきなこや、焙煎した黒豆を粉状にしてブレンドした黒豆ココアなどもあり、黒豆市場はにぎわいをみせている。

とはいえ黒豆といえばやっぱり、正月、である。「一年“まめ”に働けるように」という願いを込めて、おせち料理には欠かせない食材だ。黒豆煮はその漆黒の重厚な色と大きさ、甘みを含ませながら柔らかくゆっくりと煮含める手間のかかりようから、ひときわ存在感を放つ一品。シワが寄らぬよう最新の注意を払って煮る過程にも、一年の験担ぎが込められているように思える。(地域によっては長寿を願い、わざとシワを寄らせて煮る地域もあるといわれている)

シワが寄らないためには、煮立った湯に必要な調味料(砂糖や醤油など)と色を黒くするための重曹やさび釘を入れ、そこにさっと洗った黒豆を加え、空気に触れさせないまま一晩かけてじっくりと温度を下げながら戻す。翌日そのまま弱火にかけ、落とし蓋、さらにその上に蓋をしてとろ火でじっくりと8時間ほど煮る。

黒豆煮をたくさん煮たら、食べている途中でブランデーを少量加えて味の変化を楽しんだり、蒸しパンなどに加えておやつにしたりするのもいい。ブランマンジェの中に加えて冷やし固めれば、正月らしいデザートになる。黒豆煮をフードプロセッサーにかけてなめらかにし、泡立てた生クリームと合わせて煮汁で甘みを調節すれば、黒豆クリームのできあがり。パンケーキなどに添えていただきた