ぼくはニョーヨークで設計事務所に勤務している。

プロジェクトの規模も大きく、なかなかにやりがいのある仕事をさせてもらっている。しかし、やはり一日中コンピュータをみて、図面を引いたり、3次元のモデルをつくっているだけどだと、どうしても自分の手を動かして、なにかつくりたいという気持ちになってくる。そこで、こちらでも日本でやっていたDIYを再開することにした。

ちょうどアパートのインテリアを改造することもあり、棚や猫のタワーなどいくつかつくるものがあった。調べてみると、マンハッタンにもホームセンターや材木屋があった。中でも特に気に入ったのがSoHoにある「Metropolitan Lumber」という店だ(写真)。ロケーションは高級ブティック街からも近くにあるにもかかわらず、そこだけ異質の空気感を放っている。

まず石造のアーチをくぐると、そこは10mほど吹き抜けたスペースに木材がぎっしりと置かれている。そして、その横にハードウェアストアがあり、そこで、ネジや接着剤などを揃えることができる。ぼくはいつもバーチ合板という木を買い、Metropolitan Lumberで、指定するサイズにまで切ってもらい、家で組みたてをするという流れだ。


ぼくは、なんでも応用の効くシンプルなボックスをつくるのが好きで、ひたすらそれをつくっている。一つでも置けば座れるし、積み重ねればレゲエのブームボックスのように、独特の表情のある収納スペースになるからだ。しかし、ものづくりの常で、近いうちにもっと複雑なものをつくりたくなる予感がしている。ニョーヨークには、作業環境の整った工房をシェアして使うような場所も多いので、いまはそれを探している最中である。日曜大工の本格さが、平日の建築設計のそれに追いつく日も近いかもしれない。

隈太一

隈太一

建築家。1985年東京都生まれ。2014年シュツットガルト大学マスターコースITECH修了した後に、2016​年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了​。2017年よりアメリカ、ニューヨークの設計事務所勤務。素材の可能性、組み合わせによる空間、場所のデザインを専門とする。代表作に、カーボンファイバーと伸縮性のある膜を用いた、新素材の組み合わせによるパビリオン「Weaving Carbon-fiber Pavilion」、自身が運営するレンタルキッチンスペース「TRAILER」のインテリアデザインなど。

instagram:@taikuma