たった一粒料理に入っているだけで、秋という季節を表現できてしまう銀杏。葉が黄色く染まる頃になると、イチョウの木(雌株のみ)の下で熟した実を拾い集めることができる。ただし人によっては素手で触るとかぶれることもあるのでご注意を。食用にしているの胚乳種の部分のみで、周囲を覆うあの独特の匂いがする外皮は食べられない。
鮮やかな翡翠(ひすい)色をしたものは、夏の終わり頃から出回る早生種。まだぷんと青臭いが、この時期ならではの独特の風味と食感でいち早く秋の訪れを感じさせてくれる。そして晩秋。いよいよ黄金色に輝く銀杏の充実した香りと、もちもちとした食感を存分に味わえる。茶碗蒸しや炊き込み御飯に入れればたちまち料理に秋が漂い、酒のつまみにと串に刺して揚げたものや塩炒りしたものを供せば風情が生まれる。豊かな日本の実りの秋をしめくくる食材である。