日本の秋を代表する花といえば、今も昔も「菊」である。ふと庭先に艶やかな小菊の咲く一角を見つけたり、菊の品評会があるのもちょうど今の時期。

9月9日は重陽(ちょうよう)と呼ばれる節句。昔から奇数は縁起の良い数字といわれ、その奇数の最大数字である9が並ぶ「重陽」は、一年で最もめでたい日とされてきた。旧暦の9月9日を現代使われている新暦に換算すると、2017年の重陽の節句は10月28日。なるほど新暦の9月9日では菊の花や栗がまだ出回っておらず、重陽の節句をしようとなると至難のわざ。このあたりが重陽の節句が現代において廃れてしまった理由なのだと思われる。

さて、菊の花。その高貴な香りや鮮やかな色は、ぜひとも日々の生活に取り入れたい。菊(食用菊)は、花びらを数枚酒に浮かべるだけでも風情が出る。ほぐしてサラダや和え物、散らし寿司や混ぜご飯にはらりと散らすだけで華やかな一品に。さっとゆがいたものを青菜の煮浸しに加えれば菊の花の食感や香りがふんわりと漂い、甘酢につければしゃきしゃきとした色鮮やかな箸休めになる。重陽の節句を意識した食事のあとには菊の花を浮かべた菊湯で身体を清め、菊枕(枕元に菊を置くだけでもよい)で邪気祓い。年に一度、菊の持つ不思議な霊力に酔いしれてみてはいかがだろう。