no.06| 金継ぎで長く使い続ける塩壺

大事な日用品は直して使う。昔はとても普通な事だったけれど今はどうなんだろう。みすぼらしい、買い換えればいいか、みたいな感じだろうか。たしかに、修理にかかる費用はその器の価格を上回る場合もあるから、無理にする必要はないけれど、直すという選択肢がある。という事は知っておいてほしい。

先日、塩壺の蓋を料理中にうっかり落としてしまい、見事に蓋が真っ二つになってしまった。困った蓋がない。この塩壺は粗い土を使い、調湿作用で塩をダマにならないように保ってくれるというもの。実際、この塩壺を使ってからは、カチカチでスプーンが刺さらないなんて事がなくなった。デザインはごくシンプル。サイズの設計がとても優秀で、直径90mm×高さ85mmという大きさは、女性でも片手で掴みやすく、置いても安定感があるし。口も広くて塩をすく使い勝手がいい。でも蓋が割れた。普通なら捨ててしまうところだが、割れたのは蓋だけだし、とても気に入っていたので継ぐことにした。


急遽ネットで調べ、最低限の材料を買い、見よう見まねで継いだ。よく見ると継ぎ目は凹んでるし、プロから見たら酷いものだと思う。でも愛着が溢れた。正直、今のほうが好きかもしれない。なんだか趣があるような…。という親ばかの思考にさえ入っている。壊れないに越したことはないけど、直すことで更に好きになる事もあると知った。今度食器を買うときは、継いで様になりそうな物を選んでみるのもいいかもしれない。

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た し

た し

日用品デザイナー。生活の合間にちょっとものづくりを。のはずが、いつのまにか、彫金、陶芸、ガラス、染色、木工などできるアトリエのような家に。日々作ったものをtwitterにUP。最近購入した陶芸用の窯で部屋が狹いのが悩み。
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