静岡出身のモデルKAINO Yuさんが地元静岡でお茶にまつわるスポットを巡ります。実は、KAINO Yuさんの祖父やお父さんもお茶に関わる仕事をしていたのだとか。普段からお茶をよく飲み、ローカル愛に溢れる彼女が静岡県から発信される魅力的なお茶カルチャーを紹介します。

柔らかな自然光が差し込む室内。木製の専用テーブルの上に、ガラス製のシャーレに入った様々なお茶やハーブが標本のように並んでいる。本日は茶事変プロジェクトの立上げメンバーで、「合組-GOUGUMI-」を監修し、自らサービスを提供する茶師の本多茂兵衛さんが、モデルKAINO Yuさんのオリジナルティーをつくる。どんな味になるのか期待がふくらむ。

そもそも合組とは、産地や品種によって味が異なる茶葉をブレンドし、味わいを整えて商品にする為の、お茶業界の伝統的な技法。茶事変が提供する「合組-GOUGUMI-」は、その技術を新しい味づくりに応用している。茶師と体験者が対面し、ライフスタイルや味の好み、健康状態などを答えていく。するとベースとなる茶葉からハーブ、スパイスが調合され茶のレシピが出来上がる。



「今日はKAINOさんの自分だけのお茶を作っていただきます。6種類のお茶と8種類のハーブから、インスピレーションで選んでください」

お茶の種類は、おなじみの煎茶だけでなく、中国で作っているものと同じ製法の釜炒り茶、やぶきたの紅茶、深蒸し茶、茎を混ぜ込んだ白折茶、苦味や渋味が少ないほうじ茶が並ぶ。ハーブやスパイスは季節によって変わるが、レモン、バラの花、レモングラス、ハイビスカス、ラベンダー、マリーゴールド、カモミール、月桃の実(沖縄で親しまれているショウガ科の植物)。酸味や甘味のあるハーブは、お茶と同様にそれぞれ香りも効用も違う。



「まず、ベースのお茶はどれにしましょうか」
KAINOさんはゆっくりとひとつひとつ茶葉とハーブの香りを嗅ぎ、釜炒り茶をセレクト。ハーブはレモングラス、マリーゴールド、月桃の3種類に。

「釜炒り茶は、さっぱりとした味わいです。マリーゴールドのお花を入れると甘くなり、気持ちが柔らかくなりますよ。月桃は少し高揚感が高まる効果があるお花です」



本多さんは茶さじで茶葉をすくい、ハーブを摘み、色みがわかりやすい「拝見盆」という茶器具の上で組み合わせてくれる。色鮮やかなオレンジ色のマリーゴールドと濃い茶葉のコントラストは目にも美しい。さらに量を調整しながら、月桃の実やレモングラスも加えていき、ガラス製の茶器に85〜90度のお湯が注がれる。立ち上る白い湯気に続き、香ばしいお茶とハーブの香りが立ち込め、気分がシャンとする。出来上がったお茶を試飲してみる。

「いかがですか?」
「香りが甘く、後味がすっきりしていて飲みやすいですね。気分転換にも良さそう」
「甘めの釜炒り茶に、レモングラスの爽やかさとマリーゴールドと月桃の甘みですね」
「本日のKAINOさんのお茶です。お名前をつけていただけますか?」
「私の苗字を入れて、茶事変を文字った“KAI事変”にします!」
「KAI事変、いただきました。ありがとうございます」



元々、お茶はお湯の温度によって旨味や渋味など、味が変化するもの。加えて、茶とハーブ、スパイスでは抽出時間が異なるため、一煎目、二煎目と味や香りに大きな変化が生まれる。そもそも、本多さん自身料理が好きで、ハーブやスパイスをお茶に応用できると思い、茶事変で試行し始めた「合組-GOUGUMI-」。見た目も華やかで、茶師との対話で出来上がるお茶は、まさに一期一会の味で、貴重な体験だ。

本多さんの行う合組イベントでは、組み合わせたお茶をガラス瓶に入れてお土産として渡してくれる。また、出来上がったお茶は、常にアーカイブしてあるので、いつでも同じお茶を味わうことができる。‘私のお茶‘として友人や家族にプレゼントできるのも嬉しい。

「よく‘事変’という言葉が一人歩きするのですが。〈茶事変〉というのは、お茶の世界をレボリューションしたいわけではなくて、お茶(茶事)を変えることで、人々の暮らしやライフスタイルを変えていきたいという思いをもったプロジェクトなのです。静岡のお茶だけを広めたいのではなく、茶葉や茶器など世界中の良いものを使って、様々なお茶の楽しみ方を広めたいですね」

本多茂兵衛

茶事変プロジェクト立上げメンバー ティーサービス監修責任者 本多茂兵衛を継いで五代目。富士山の麓で静自ら茶畑を耕し、様々な茶をつくりつつ、茶人として世界中を飛び回りお茶の魅力を伝えている。