ニコライ・ノルガードは、いまではミシュラン二つ星を誇るレストラン〈Kadeau〉の共同設立者兼シェフとして世界的に有名だ。「最初はパートナーのラスムスと一緒にカジュアルなレストランをスタートさせました。友人たちに手伝ってもらいすべてをDIYで作り上げるなど、コミュニティを形成するようでとても楽しかったのですが、もっと本格的にしなければならないと思い、数ヶ月したのちに〈Kadeau〉をオープンさせたんです」

これまで、職務的なシェフとしての経歴がなかったニコライは〈Kadeau〉をスタートさせると同時に生まれ故郷であるボーンホルムをベースとしたノルディック料理に注目する。

「ボーンホルムは冬の季節が長く、とても寒い。だからこそ春を迎えると厳しい環境に耐え抜いた食材が豊かに育ちます。酸味と甘味のバランスが取れたベリーが生まれ、芳醇な香りのエルダーフラワーが花ひらく。旨味が凝縮した海産物が獲れるのもこのおかげです。これらを乾燥、燻製、塩漬け、発酵といった北欧に長く伝わる調理方法を用いて料理することがボーンホルムに生まれた自分たちならではのスタイルだと気付きました」

オープンしてすぐ事が順風満帆に進んだわけではない。

「2007年にボーンホルム、2011年にコペンハーゲンに〈Kadeau〉をオープンさせたのですが、両方ともに設備が充実しているわけではなかった。夏季限定でボーンホルムで営業し、それが終わればすべてのカトラリー、お皿、エプロン、ウェイターシャツ、あげくにレジスターまでをもパッキングしてコペンハーゲンのお店まで運んで営業していました(笑)。幸いなことに最初からたくさんのお客様に来ていただいていたのですが、それに比例してスタッフも増やさないといけない、仕込みもしないといけない、また、十分なサービスを提供するのにスペースが足りなかった。すぐにお店を移転させたのですが、数年経って、今度は自分たちのコンセプトからは大きすぎるお店だと気付きました。そうして現在のロケーションに移したのですが、いくつものステップを重ねてようやく今の〈Kadeau〉の形があるんです。でも、こうして試行錯誤を繰り返して料理やレストランをより良いものにしていくのが我々のスタイルなんだとも思います」

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