興味から始まったコーラ作り

「学生時代に世界中を旅していた時、旅先の山奥に赤いコカ・コーラのトラックが走っていたのが印象的で、旅をしながらコーラを飲み歩くようになり、色々調べているうちにコーラマニアになっていきました。インターネットで100年前のコーラのレシピを見つけて、自分でも作り始めたのが今の活動のきっかけです。」

そう答えてくれたのは、『伊良コーラ』代表の小林隆英さん。
コーラを自分で作るというとなかなか想像ができないが、作り方を訪ねてみると最初は市販のスパイスをベースに作るところから始めたという。

「最初からコーラっぽい味にはなったのですが、今のレシピができるまでには2年ほどかかりました。なかなか納得のいく味が作れなかった時、漢方職人だった祖父の道具や工法を活用してみたんです。そしたら、いままでと全く違う味になりました。
材料に関しても、コーラ作りにはコラの実というのが大事なのですが、これは実際にガーナの農園まで見学に行き、直接輸入させてもらうようになりました。」


広告会社に勤務しながら趣味としてコーラを作り続け、コーラづくりを始めてから3年後、国連大学前で開かれている青山ファーマーズマーケットに出店を果たす。

『カワセミ号』と名付けられた移動販売車で振る舞うコーラは、初出店後すぐに完売。その後も各地で出店を続け、瞬く間に人々の心をつかんでいった。



「最初から店を始めようとは思っていなくて、あくまで趣味の範疇でした。ただ、世界に今までなかったクラフトコーラという飲み物を伝えたいと思い、出店しました。」

初出店から半年後には会社を辞め、本格的に活動を開始する。現在は各イベントの出店、百貨店や映画館への卸しを中心に活動している。

祖父から引き継いだもの

普段のコーラ作りは、祖父から引き継いだ場所を改装した工房を使用しているという小林さん「屋号もパッケージデザインも、祖父からインスピレーションを得ました。ただ、祖父のものをそのまま引き継ぐのではなく、変化も加えています。」

伊良コーラという屋号は、祖父の伊東良太郎さんが営んでいた「伊良葯工(いよしやっこう)」という漢方工房から引き継いでいる。
どこか懐かしさを覚えるロゴデザインは、コレクションされていた昔のショップカードからインスパイアされたものだ。


「今後工房の隣にお店を開店させます。ここではコーラの製造過程を見てもらいながら、出来立てのコーラを提供する予定です。工房も昔の建物なので建築的な制約がありながらも、面白い空間に仕上げています。」


その工房をリニューアルする時、小林さんに印象的な出来事があったという。
「改修するため、工房を解体した日の夢に祖父が出てきたんです。屋号を引き継いで、新しい形で世の中に広まってきたことは祖父孝行じゃないですけど、思いをしっかり引き継ぐことができたのかなと感じました。」


クラフトコーラは世界へ

「ゆくゆくはコカ・ペプシ・イヨシという3大コーラブランドになる目標があります。今の活動ができているのも祖父の築いてくれた歴史や周りの方の縁があってこそ。それはしっかり還元していきたい。
伊良コーラの店舗のライバルというか、理想はディズニーワールドだと思っています。僕らも美味しいコーラを提供するのは前提にありながら、ディズニーのように世の中にワクワクを増やして行くことが役目だと思っています。」

伊良コーラの工房の横には神田川が流れている。小林さんの思いと共にカワセミ号は神田川から東京湾へ、東京湾から世界へとワクワクを届けるために進んでいく。