利用されていない土地を見つけて、シドニーの市内に農地を作ることが最初の目的だ。しかし、エマは強調する。生産力を高めて多くの野菜を売ることが目的ではない。
人々とフードシステムとの距離を縮め、健康な食生産を取り戻すことが重要だと。
(左)農地には養鶏小屋も併設。鶏糞は大事な肥料となり、養鶏は循環型農業における重要な要素だ。(右)カゴに閉じ込めることなく、畑に放して運動させた鶏たちが産んだ健康な卵。
「アパートに住んでいる人がPCFに来て、ベランダで野菜を育てるようになったら嬉しいし、その人たちがここで仲間になって、情報を共有するコミュニティができたらそれは素晴らしいこと。フードシステムと人々のリンクを取り戻し、その重要性を共有できる豊かな人のつながりを生み出すことが私た
ちの動機だから」
都市のポケット空間が農地に変わる。そして、周辺地域の人々の意識が高まり、やがて都市に生産力のある健康な緑地が増えていく。エマとマイケルはそんな未来を思い描き、毎日の農作業を続けている。
(左)今月と来月、どのタイミングで何が収穫できるのかをリスト化している。(右)最近、日本でも人気が高まっているバターナッツ・スクワッシュという品種のカボチャ。
畑作業をするマイケルは、これまでの活動について次のように語る。「生産性の高い土を作るところから始まり、害虫の対策にも苦心した。いつも課題に直面しているから、学ぶことは多いよ」。そしてエマは、行政の協力を強く望んでいる。「都市農業をやっている人たちに、例えば税の優遇をするとか、屋上を農地にするのであればその施設投資を部分的に補助してくれるとか、財政的な支援をしてもらいたいわ。それと、教育面ももっと介入してほしい。市や国が動いてオーガニックな食の生産の意識を高めれば、社会が大きく変わるはずだから」
『PERFECT DAY03号』より転載。この記事が掲載されている雑誌をAmazonでチェック
都市で土に触れ 人とつながる