エアプランツを中心としたボタニカルをオブジェに仕立て、インテリアと植物を組み合わせた独自スタイルを提案するボタニカル・ブランド、「The Landscapers」。昨年、鎌倉山にオープンした直営店「AROUND」では店主自らが厳選した生活小物やデザイン雑貨も揃え、「The Landscapers」が考える理想の暮らしを具現化している。今回はこのブランドを展開する塙正樹さん・麻衣子さん夫妻の自宅兼アトリエを訪ね、気鋭のクリエイターが考えるボタニカル・ライフについてインタビューを行った。

ボニカルを用いたオリジナル・オブジェのほか、造園や植栽、ディスプレイなど、植物にまつわるあれこれを手がけるユニット、「The Landscapers」。主宰する塙さん夫妻の自宅兼アトリエは、鎌倉駅にほど近い鎌倉山の高台にある。築40年の古い日本家屋をリノベした空間は、古きよきものと異国情緒あふれる植物たちが共存する不思議な空間だ。家の前にはアカシアの木や梅の古木、ビワの木が生い茂り、リスやタヌキ、ハクビシンが出没するという自慢の庭が。梅の木にはグアテマラ産のカラフルなハンモックが吊るされている。聞けばこの庭、もともと自生していた日本の落葉樹とうまくマッチする欧米の木を夫妻で植え込み、野趣あふれる、けれど明るいムードに造り上げたものだという。庭の片隅にはアトリエとエアプランツのための温室が1棟。この庭は「KAMAKUKLAND」名義で撮影ロケーションとしても貸し出している。

きっかけはグアテマラのエアプランツ
デザインとして美しいオブジェを目指し

もともと家具やインテリア雑貨を扱うプロダクトデザインの会社に勤務していた塙夫妻。退社後、夫の正樹さんはアパレル業界へ、妻の麻衣子さんは造園業へ進んだ。アパレルの道に進んだものの、従来のグリーン好きが高じて、出張先の中南米でグリーンの生産者を訪れるようになったという正樹さん。特にグアテマラのエアプランツの力強さに魅了された。

「グアテマラは高地にあるので寒暖差が大きい。その上、気候は乾燥していて、植物にとってはなかなか過酷な環境なんです。そんなロケーションで育つエアプランツは、日本で見かける整った姿のものより断然、ダイナミック。生命力や力強さが段違いなんです」

もともとグリーンは好きだったというが、ありきたりの園芸ではなく全く新しいアプローチで植物をフィーチャーする方法はないものか。エアプランツをきっかけに、かつてないボタニカル・ブランドのアイデアが固まってきた。

「こうした力強い植物をうまくオブジェとして仕立てられないかと考えました。土がいらないというエアプランツの自由さが、オブジェとしての可能性を大きく広げてくれるから」

夫のプロダクトへの深い造詣とアパレル業で培った海外とのコネクション、妻の造園の知識、それぞれのバックグラウンドを合わせて、ボタニカル・ブランド「The Landscapers」が発足した。

インテリアにいきいきとした造形を!
日々の暮らしに寄り添うグリーン

「The Landscapers」が注目を浴びるようになったきっかけが、GREENROOM FESTIVALや蔦屋書店などにディスプレイされていた「DRIFTWOOD TILLANDSIA」。淡水から採取された天然の流木に、温室で大きく育てたティランジア(エアプランツの一種)を園芸用ボンドで留めたもの。数週間するとティランジアから小さな根が出て流木に着生する。エアプランツの発根する性質を生かしたオブジェだ。

「エアプランツは風通しのいいところが大好き。だから樹木や切り立った岩の上など、風が吹き抜ける場所に好んで着生します。そんな風に本来の環境に近づけてやると栽培しやすくなるんですよ」

楽しみながらボタニカルを暮らしに取り入れよう、そんなコンセプトを掲げる塙さん夫妻が現在、多く手がけているのがドライフラワー。住環境が悪い、植物に手間をかける余裕がないというグリーンビギナーにも手軽に楽しんでほしいと、ドライフラワーを積極的に用いている。

「日当たりが悪い、風通しがない、出張が多くて手をかけられない。そういう環境にあってもボタニカルの存在感をインテリアに取り入れてほしいと思って。ドライフラワーなら水やりや風通しを気にすることなく、その姿かたちを感じてもらうことができます。もちろん、生きているボタニカルに越したことはないけれど、ドライフラワーがその入り口になってくれるかもしれない」

新作は、ガラスのシリンダーに鮮やかな発色のケイトウやネリフォリア、プベッセンスなどのドライフラワーを美しく配置した「DRY CYLINDER」。レザーのオリジナルリボンで束ねた、ドライフラワーのブーケもリリースしている。

「現在はドライフラワーをオイルで閉じ込めたハーバリウム(植物標本)のサンプルを製作中。日本ではフェミニンなテイストのハーバリウムが多いのですが、僕たちはシュールな造形のドライフラワーを使ったドラマティックなものを考えています。プロダクトとして高いクオリティをクリアしたいから、ボトルのデザインもトライ&エラーを重ねています」

その土地の風景にしっくりなじむ
「ありのまま」の自然の庭がいい

プロダクトに関しては独自路線を行く「The Landscapers」だが、庭造りに関してはより自然に寄り添ったスタイルを貫く。現在、さまざまなスタイルのガーデナーが活躍しているが、「スタイルがないことが『The Landscapers』のスタイル」と正樹さんは言う。

「最近ではカリフォルニアテイストの、日本ではなかなかお目にかかれないユナグリーンで西海岸風に作るスタイルも流行っていますが、僕たちはもっとその土地の個性を大切にした庭づくりを目指しています。目指すのは、人の手の入っていない林や森。自分たちがこうありたいという姿より、その場所の気候や風土に合って、元々の風景にしっくりと馴染む庭がいい。まるで昔からそこにあったかのような自然な佇まいを出せた時は、心底嬉しいですね」

植物の面白いところは、植えた直後よりも5年後、10年後が良くなっているところだという。庭もそうだ。造園直後の整えられた姿よりも、その土地の景色の一部になっている10年後が美しい。

「植えたばかりの木を、年月が育ててくれるんです。例えば太陽の向きに合わせて枝ぶりや葉の茂り方が変わっている。造園当時には想像もつかなかった茂り方、育ち方をすることもあります。そういう進化を見られることがグリーンの醍醐味なんだと思います」

The Landscapers:http://landscapers.jp/
KAMAKULAND:http://kamakuland.jp/