no.18 | タダフサの三徳庖丁

今年の冬、新潟県を旅行した。燕市と三条市にあるいくつかの工場を見学したなかで「庖丁工房タダフサ」に立ち寄り、三徳庖丁を購入した。この庖丁、持ち手は丸っこく、ロゴマークもケースも、どことなく愛嬌がある。

しかし持ち手は丸っこいが、決して滑らない。手になじみやすく、小さな手のわたしでもしっかりとにぎりやすい。

ロゴマークはオシャレでついてるわけじゃない。庖丁の製造工程で使われる「つかみ箸」がモチーフになっている。これは、変化するものづくりのなかでもしっかりと道具を使って手仕事を継承していく、そんな職人の覚悟を表現しているんだそう。

そして、ケースに「庖丁問診表」と庖丁をいれて工場へ発送すれば、有料で研ぎ直しを承ってくれる。タダフサの庖丁は、できるヤツだからといってツンとしてないところが、すごく気に入ってる。ものとしての良さに加えて、長く大切にしてもらうためのデザインが、すみずみまで行き渡っている。

タダフサの工場は、天井が高く、火が見えやすいよう昼間でも暗かった。炉のまわりはとても熱く、削る音叩く音がガンガンと鳴り響き、想像以上に騒々しかった。職人さんの座っている椅子に目を凝らすと、アウトドアチェアだったりピアノの椅子で驚いた。聞くと、職人さんたちの使いやすいものを自由に使ってもらっているんだそう。個性が出ていて、微笑ましかった。わたしの手にしている庖丁も、それぞれの椅子に座った職人さんたちの手仕事を介してここにあると思うと、愛着がますます湧いてくる。道具のむこうには、つくる人たちがいることを、タダフサの庖丁が教えてくれた。

パン切り ¥9,500 万能170mm(三徳)¥9,000 万能125mm(ペティ)¥7,500 /タダフサ

庖丁工房タダフサ www.tadafusa.com

鳩(しらかた はるか)

鳩(しらかた はるか)

清澄白河で2匹の猫と暮らす、編集・ライター。通販とお酒が好き。
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