FOR “URBAN NATURALIST” 05

ネットワークが遍く行き渡り、SNSによる無数の発信によって、情報の価値低下=デフレーションはかつてないほど進んでいる。殆ど無料であらゆるエンターテインメントにアクセスし、いくらでも時間を消費することができる。ある意味、娯楽やカルチャーは民主化され、誰でも手の届くものになった。

一方で、こうした価値の担い手たち、とりわけ若者たちは、かつてのように音楽や映画、アートやファッションといったかつてのカルチャーの王道に夢を抱くことが難しくなっている。それらに共通するのは情報化し、デジタルのネットワークに(情報量の多寡はあれども)容易に乗せることができるということだ。では、かつてそうしたクリエイティブに向かっていた若者たちが居なくなったのかというと、そんなことはないはずだ。彼らは何処に行ったのか?具体的に例をあげるなら、それは「食」を取り巻く世界だ。ブルックリンやサンフランシスコのヒップスターを追いかけると、その多くはレストランのシェフやオーナー、マイクロブリュワリーの醸造家、あるいはキュレーションの効いたグロサリーストアの店主だったりする。彼らはメディアを通じて、そのカリスマ的なストーリーを流通させる。けれど結局はその場に赴いて、手間暇かけて用意した美しい一皿の料理を、あるいは独特なフレーバーを加えた一杯のビールを、グラスフェッドミルクで作られたチーズを、味わってみないことには何も理解したことにはならないのだ。これらは決してインスタントなオンラインの情報で置き換えることのできないもの。だからこそ価値が生まれる。体験を伴った物語=食が魅力的であることは、日本の若者たちも気づき始めている。

今号で取り上げた目黒のレストラン〈Kabi〉のメンバーも、前号で紹介した深大寺の〈Maruta〉のスタッフもみんな20代の若者だ。〈Kabi〉のイニシャルメンバーに編集者が加わったのも、下北沢の斬新なレストラン〈Salmon & Trout〉がミュージシャンやライターのユニットから成るのも決して偶然ではない。彼らは食がオンラインに乗せることのできない究極のメディアであることを理解しているのだ。タトゥーを施した腕は楽器を奏でる代わりに、フライパンをゆすり、フィニッシュのソースを添える。彼らは現代のピストルズであり、ゴダールであり、川久保玲なのかもしれないのだ。


PERFECT DAY 05号をAmazonでチェック

PROGRESSIVE FOOD CULTURE
進化する食の現在

TOKYO RESTAURANTS NEW GENERATION
東京のレストランは今

ANTHONY BOURDAIN THE MAN WHO ATE THE WORLD
アンソニー・ボーデイン:世界を喰った男

NEW WAVE PRODUCERS
北海道・道南地方に新時代の生産者を訪ねて

PROGRESSIVE FOOD WEAR
テーブルを彩る プログレッシブ フードウェア

CITY:COPENHAGEN

FOOD
BORN IN JAPAN, AND NOW MADE IN BROOKLYN:SAKE
酒:生まれは日本、育ちはブルックリン

ART PIECE
REI NAITOU
内藤 礼

BEAUTY
COMFORT IS THE KEY
いま、肌を考える

FASHION
UL TRAVELING
大人のユニフォーム

HELLY HANSEN NATURE FITNESS
WHAT’S YOUR STANDARD
#03 RIDE ON FLOW YUKI

SPORTS
TRAIL RUNNING IN HONG KONG
香港 天空のトレイル

TRAVEL
THROUGH THE OUTBACK
オーストラリア 知られざるアウトバック

BOOK
BOOK OF FOOD TO TASTE VISUALLY
視覚で味わう「食」の本

INTERVIEW
THINK OVER 2020
変革者が見据える2020 年と、その先
池田純

CAR
THE CITY VEHICLE No.05
JEEP J37 × GRAND ROY AL green 井上隆太郎

LIVING
MAKING HOUSES TO CHANGE VALUES
INFINITE MINIMUM HOUSING
立体最小限住宅 “No.38” 石津祥介

ESSAY
STARS, OCEAN, AND THE VOYAGING CANOE
星と海と旅するカヌー 内野加奈子


PERFECT DAY 05号をAmazonでチェック

PERFECTDAY 05 概要

講談社MOOK
PERFECT DAY 05
2018年9月20日 第1刷発行

発行人・編集人 松田 正臣(株式会社アルティコ)

印刷・製本所 図書印刷株式会社

発行所 株式会社アルティコ
PERFECT DAY編集部
〒151-0051 渋谷区千駄ヶ谷1-20-3 6F
TEL:03-6447-2360
Mail. ad@perfectday.jp(担当:荒川)

発売 株式会社 講談社
〒112-8001 東京都文京区音羽2-12-21
TEL (販売部) 03-5395-3830

運営体制

PUBLISHER・EDITOR IN CHIEF
Matsuda Masaomi 松田 正臣

ART DIRECTOR
Komiyama Hideaki 小宮山 秀明

DESIGNER
Ito Masahiro 伊藤 正裕

EDITOR
Arakawa Chie 荒川千絵
Hisatsune Anna 久恒 杏菜
Kaitatsu Ryoya 海達亮弥
Ono Mariko 小野真理子
Omata Yufta 小俣雄風太
Tanaka Yuho 田中優帆

PROOFREADING
Shuchinsha 聚珍社

〈主な発行メディア〉
PERFECT DAYの発行(年4回 春夏秋冬 発売)、WEB版 perfectday.jp の運営
markの発行(年2回 春秋 発売)
mark WEB版 mag.onyourmark.jpの運営

【お詫びと訂正のお知らせ】
本書に下記の通り誤りがございましたので、訂正させていただくとともに深くお詫び申し上げます。

P. 142 30行目
誤)BOLDMAN 03-6447-1441
正)BOLDMAN 03-6447-2018