緑茶や番茶を焙じて(火をいれて)香ばしくしたものが、焙じ茶である。寒さが増す季節には、緑茶よりも焙じ茶がしっくりと体になじんでくる。しっかりと火を入れることでカフェイン濃度も極端に下がり、就寝前に飲めるのも寒い夜にはありがたい。

もしも風味や色合いが落ちてしまった緑茶が家にあったなら、焙じ茶を焙じるところから楽しんでみては? ごく弱火で熱したフライパンや土鍋に適量茶葉(緑茶)を広げ、蓋をして2~3分蒸らしながら火入れし、その後蓋を外して火を強めて1分ほど炒り上げ、皿に広げて冷ませば完成。焙じた茶葉の香りが部屋を包むと、冬篭りもいいものだと思えてくる。

茶粥にしても、冬らしい香ばしい味わいがたまらない。しみじみと味わう茶粥には、表面を少し炙った焼き梅干しや、たくあんを燻製にかけたいぶりがっこ、ちりめん山椒やごま、きゃらぶきに塩昆布などの滋味あふれる日本の食材がよく似合う。

スイーツの世界では、焙じ茶の香ばしいフレーバーは乳製品とも相性がよく、濃く煮出した焙じ茶を温かいミルクで割ってチャイのように楽しんだり、アイスクリームやプリンなど、スイーツのフレーバーとしても積極的に使われている。甘みの中にほのかな苦味や渋み、香ばしさが加わって、芳醇な香りが口いっぱいに広がる