喜ぶに通じる「よろこんぶ」と言われ、日本では政(まつりごと)や出陣、祭祀、結納、結婚式などさまざまな場面で縁起物とされてきた昆布。さらに遡ると昆布の古名は「広布(ひろめ)」といい、こちらも演技のよい「お披露目」の語源になっている。延喜式(平安時代の法令集)によれば、良質な昆布が採れる地域では昆布を税金として納めていたと記されているほど、古くから日本人に馴染みのある食材である。

日本では昆布の約90%が北海道で採取され、採取する場所により、昆布の種類が変わる。主な種類は「真昆布」「利尻昆布」「日高昆布」「羅臼昆布」。
それぞれの味わいの違いを知りたければ、水出しをおすすめしたい。ポットに水1ℓと昆布20gを入れて一晩冷蔵庫で抽出し、昆布をとり出す。たったこれだけでクリアな昆布だしがとれる。特に利尻昆布のだしは野菜との相性がよく、だしをベースに作った野菜ポタージュは旨味がたっぷりでとびきりおいしい。

だしをとるだけにあらず。一枚の昆布を入れた湯で作った湯豆腐や、土鍋にさっと水をくぐらせた昆布を一枚敷き、生牡蠣をのせて蒸し焼きしたものも冬の味わい。さっと湿らせた大判の昆布に、薄切りにして塩を薄くふった鯛の刺し身を並べてくるくると巻き、ラップに包んで一晩冷蔵庫でなじませれば、鯛の昆布締めが完成する。