冬のベルリンといえばクリスマスマーケット、クリスマスマーケットといえばグリューヴァイン(ホットワイン)!12月のベルリンはまさしく、「凍てつくような」という表現がぴったりの寒さだけれど、あの寒空の下、クリスマスマーケットに繰り出し、アツアツのグリューヴァインで温まるのが何よりの楽しみだった。

グリューヴァインとは「燃えるワイン」という意味で、その名の通り、ワインにシナモンやクローブなどのスパイスを加えて温めたホットカクテルのこと。好みでハードリカーを1、2滴ドロップする場合もある。昔はどんなグリューヴァインでもおいしく飲めたけれど、年を重ねると舌のハードルも高くなる。お店や自家製はともかく、クリスマスマーケットに出ているベンダーのグリューヴァインは甘すぎたり酸っぱすぎたり、「これぞ!」というアタリの一杯にはなかなかめぐり合えない。

……なんて話をしていた時、現地在住のコーディネーターが連れていってくれたのが、マーケットにほど近い小さなカフェ。そこに、グリューヴァインに代わるベルリンならではのホットカクテルがあるという。名前は「ベルリナー・ウィンター」、つまり「ベルリンの冬」。ウォッカにドイツ産のオーガニックのフレッシュアップルジュースと季節のスパイス(レシピは秘密)をミックスしたもので、甘さは控えめで香りも爽やか、リンゴの酸味が効いている。山積みのリンゴの箱を持った男性の手書きイラストが印象的なボトル入りのドリンクで、10月から2月にかけての冬季のみ販売される。カフェやバーではこれを温めて提供しているが、それをわざわざ戸外に持ち出して飲むというベルリナーも多いとか。

話によれば、これを開発したのは元バーテンダーの男性。勤めていたバーで「リンゴジュースのホットウイスキー割り、シナモン添え」をオーダーされたことから新しいホットドリンクの着想を得た。「リンゴに合わせるならウイスキーではなくウォッカで、リンゴとシナモンの組み合わせは当たり前すぎて面白くないから、もっとクリエイティブなマッチングを……」と自宅で試行錯誤した結果、「ベルリナー・ウィンター」が生まれたそう。

2012年の冬に販売されると、瞬く間にベルリンのおしゃれカフェやバーに広まった「ベルリナー・ウィンター」。夏にも飲みたいというリクエストが多く、どうやらサマーバージョンも開発したというウワサ。こちらはまだ試したことはないが、ドイツらしい香料、ヴァルトマイスターにライムなどを加え、微炭酸で仕上げているらしい。

というわけで、毎年12月になるとさむーい屋外で飲みたくなる「ベルリナー・ウィンター」。この時期ドイツにお出かけの際は、身体をぽかぽかと温めてくれる「ベルリナー・ウィンター」を片手にクリスマスマーケットへ。お土産にもおすすめです。

倉石綾子

女性誌編集部を経てフリーのライター、エディターに。旅、お酒、アウトドアを主軸にした記事を雑誌、ウェブメディアで執筆する。アウトドア×日本の四季× 極上の酒をコンセプトに掲げる酒呑みユニット、SOTONOMOを主宰(facebook.com/sotonomo/)。著書に『東京の夜は世界でいちばん美しい』(uuuUPS)。