うなぎといえば、夏の土用丑の日を思い浮かべる人は少なくないだろう。その土用丑の日という言葉は、江戸時代の高名なで博物学者であり戯作者であった平賀源内が、売上不振に悩んだうなぎ屋から相談を受け「土用丑の日にうなぎを食べよう」と打ち出して繁盛したことから広がったもの。これが日本最初の宣伝キャッチコピーとも言われている。

そもそも夏の土用といえば、一年で最も暑い時期。万葉集の時代から夏痩せには滋養の多いうなぎを食すのがよいとされてきた歴史があり、夏にうなぎを食べる風習はごく自然に定着した。実際に免疫力を高める効果のあるビタミンAも豊富であるため、滋養強壮に適した食材といえる。

けれど本当のうなぎの旬は、冬眠を間近にして身に養分を蓄える晩春から初冬にかけて。うなぎ屋では常識だという。ただ、この旬があてはまるのはあくまでも貴重な天然鰻においての話で、一般に流通している養殖のうなぎは年中美味しくいただける。いずれにせよ「黒くひきしまったもの」「精のつくもの」を冬にいただくのは養生の基本。冬のうなぎ、おぼえておきたい。