街路樹のイチョウがはらはらと舞う頃、蕎麦屋の軒先には新蕎麦の幟が立ち始める。この時期に旬を迎える秋蕎麦は、香り豊かな大地の恵みである。

さて、そんな新蕎麦はまず、ざるでシンプルに楽しみたい。最近では塩とわさびで供されるこだわりの店もあるくらいだ。とはいえ、寒さが日に日に増す晩秋から冬にかけては煮込み蕎麦も捨てがたい。蕎麦出汁を煮立たせ、ゆでた蕎麦を入れて溶き卵を加えて煮込み、ぱらりとねぎをふったシンプルなそれは体に沁み入るおいしさ。スライスした鴨と焼きねぎを蕎麦つゆで煮た熱々の鴨南蛮汁に、麺をつけていただくのも冬ならではの味わいである。冬に旨味を増す食材だけで作るので、なおさらだ。

一転、蕎麦サラダという食べ方も覚えておきたい。固めにゆでた蕎麦をごま油やオリーブオイル、塩で味付けしておき、梅肉や千切りのにんじん、三つ葉、ひじき煮などと一緒に和える。主食としても、付け合せ用としても喜ばれる。