この時期になると多いのが、忘年キャンプのお誘いだ。移動の手段としてのテン泊はするが、いわゆる“キャンプ”はほとんどしないので、キャンピングギアや何やらの情報収集をさせてもらえる忘年キャンプはありがたい機会だ。キャンプ場はほぼ貸し切り、場所によっては盛大なキャンプファイヤーも許可してもらえ、多いに盛り上がる。

キャンプファイヤーのお供に引っ張りだこなのが、ラムだ。焚き火と茶色い酒の相性は最高だけれど、中でもラムは格別。日中はモヒートやラムパンチといったカクテルに仕立てられ、時間の移り変わりとともにロック、ストレートと飲み方を変えられる。燻製をおつまみに、香りをじっくり楽しむのも野外での醍醐味。冷え込む後半戦は、ホットカクテルだ。つまりマルチに使える、懐の深いスピリッツなのだ。
テキーラやカシャッサ(カイピリーニャに欠かせない、ブラジルの蒸留酒)のように、すこーんとクリアに酔っ払えるスピリッツもいいけれど、この時期、焚き火の前で飲むならまったりと酔えるラムがいい。中南米生まれのこのスピリッツはテキーラのような厳格な原産地呼称制度がなく、いい意味で自由なお酒である。要は、サトウキビを原料とするなら、みんなラムなのだ。だから甘口で飲みやすいものから、シングルモルトを思わせる重厚な味わいまで、振り幅も大きい。おまけに、世界には4000を超える銘柄があると言われている。

私に焚き火×ラムの魅力を教えてくれたのは、アウトドア業界いち有名な、吉祥寺にあるラム専門バーの名物オーナー。彼やその周りの人種と焚き火を囲むととんでもないラム談義を聞くことができる。
例えば、三角貿易という歴史に揉まれたラムにはユニークな特徴がある。イギリスの植民地だった国ではガツンと重厚な味わいが、フランス語圏ではまるでブランデーのような華やかな香りのものが、スペイン語圏では甘みのある味わいが好まれる。絵画調の重厚なものからとぼけた絵柄のものまで、ユニークなラベルも土地柄を表しており、ジャケ買いならぬラベル買いの楽しさもある。

……なんて話に耳を傾けていると、ついつい飲みすぎてしまうのが玉に瑕。飲んだくれの私の友人はだいたいこれで寝落ちして、ほんの10m先にあるテントにさえ行きつけない。天下一品の飲み助たちをもダメにするのが、奥深いラムのパワーなのだ。

倉石綾子

女性誌編集部を経てフリーのライター、エディターに。旅、お酒、アウトドアを主軸にした記事を雑誌、ウェブメディアで執筆する。アウトドア×日本の四季× 極上の酒をコンセプトに掲げる酒呑みユニット、SOTONOMOを主宰(facebook.com/sotonomo/)。著書に『東京の夜は世界でいちばん美しい』(uuuUPS)。

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