アウトドアブランド〈ザ・ノース・フェイス〉でプロモーションを担当する田中嵐洋さんの家は、三角屋根がチャーミングな”山小屋”のような趣き。室内も合板で一面に覆われた壁や、屋根を通す梁など、アウトドア好きな田中さんの想いが体現された一軒となっている。

 都心から電車で1時間以内の距離ながら、都会の喧騒が少ない横浜の一角。目の前には川がせせらぎ、桜の木々が立ち並ぶ。穏やかな空気が流れるそこに一軒の“山小屋”がある。その主が、アウトドアブランド〈ザ・ノース・フェイス〉でプロモーションを手がける田中嵐洋さんだ。

「山が好きだった父親に影響されて、自分も山の世界に引き込まれました。スキーにトレッキング、クライミング……。趣味も仕事も、山を中心とした自然を楽しみながら生きてきたし、これからもそうでありたい」。

アウトドアを愛する田中さんにとって、自宅を建てるときも、もちろん山がインスピレーション源。

「夫婦二人で旅行に行ったシャモニーが原点。ヨーロッパの山小屋は歴史があるだけでなく、そこで働く人や物のセレクトまでが、ライフスタイルに根付いているというか、本当に格好いい。それを体現するような家を建ててみたいと考えていました」



そうして竣工に至った田中邸は、三角屋根と1階部分より大きくせり出した2階のテラスが特徴で、入り口へ向かうと「アウトドア用品を気軽に運び出せるように」と、無垢の木で作った大きな引き戸が現れる。玄関をくぐると、右手にはスキー板、スノーブーツ、クライミングロープにカラビナ、SUPなどアウトドアグッズがぎっしり。ここが、田中さんが国内外の山々へ向かう“搭乗口”となっている。

1階は日当たりがあまりよくないことから、白い壁紙で統一し、寝室や収納スペースを確保。一方の2階にはラワン合板を壁一面に使うなど、木の温もりを十二分に感じられる内装。さらにダイニングとリビング、テラスまで見通すことができる配置で、吹き抜けを加えた広い空間に。天井は山小屋らしい三角屋根に加えて、妻である佳代子さんの趣味というドライフラワーを飾れる梁も通している。

 一方、山が好きだからといって、フィールドに近い場所に住むことは選択肢になかった。

「人が何を求めているかを知らなければならない仕事である以上、都市に住むことは大切です。その上で、山が好きな人々が何を求めているかを知る。ここなら鎌倉も長野も新潟も手が届くし、空港へは車で20分くらいなので海外の山々もアクセス抜群です」。

自然をどのように楽しむのかは人それぞれ。田中さんは都市と自然をつなぐ“Airline hub”のような場所があるからこそ、最高に山を楽しめている。

田中嵐洋

三重県生まれ。幼少の頃から父の影響で山遊びに興じ、大学卒業後は本格的な山の世界へ。数社を経て、現在は〈ザ・ノース・フェイス〉のセールスプロモーションを担当。仕事だけでなくプライベートでも、フランスやカナダ、アメリカなど様々なアウトドアフィールドへ赴く。グリーンランドに行くのが夢。