「春の菊」と書いて春菊。春と秋が旬の葉野菜ではあるが、春蒔きのものは暖かくなるにつれてすぐに薹立ち(とうだち=花をつける茎がのびること)し、黄色いマーガレットのような花を咲かせるので収穫時期が極端に短い。春菊とはいえ、やはりいちばん生育に適しているのは秋から冬にかけて。

まだ柔らかな葉が多い晩秋までの間は、生のまま食べるのがおすすめ。ソテーしたきのことさっと和えたホットサラダや、柿や生ハムと一緒にオリーブオイルと塩、バルサミコで味付けしたサラダなど、この時期に旬を迎える食材との相性は抜群にいい。

春菊の香りの高さが一段と際立つのは、やはり鍋だろう。湯豆腐やゆでた牡蠣と一緒にさっとゆがいて口に含めば、ほろ苦さが鼻にツンと突き抜ける。あるいは、たっぷりのお湯で軽くゆがいて固くしぼったものを刻み、黒ごま和えや白和えに。濃厚な味付けは、香りの高さを残しつつも春菊特有のクセをまあるくする。